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提供: 幻創世界ドループ
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世界の名を求めて

 剣と魔法の支配する世界『ドループ(Δορουπ)』。その名称は失われた本当の世界の名を伝えたものではない。この名前の意味は、「失われた魂」という。
 かつて人が名前『虚無』の内から奪った『世界の名』は、人が神々の知恵を得たのだと謳われた。実際、それは魔法文明の素晴らしい栄光をもたらし、永遠の繁栄を人類に約束したかのようにみえた。人は世界の本質を操る精巧な象徴(シンボル)の体系化によって魔法万能の時代を迎え、創造神の生み出した壮大な世界法則の書き換えを進行させていった。
 しかし神々の知恵を得た人の欲望は飽くことを知らず次に神々の力を求めた。神々によって名前『狂気』の内に隠された名前『魂』の秘密を奪おうとして、名前『心』を『狂気』に決定的なほどむしばまれてしまう。人に備わっている名前『心』とは狂気に犯されるものだったのだ。その直後、人の間には互いを権力の支配下に置こうと求める激しい抗争がわきおこった。『世界の名』は度重なる争奪にさらされた。『世界の名』を奪って独り占めするには『世界の名』によって書き換えられることによるのである。その激しいいくさによって貴重な『世界の名』は人自身が生み出した名前ですらない『混沌』という虚無へ再びかえされてしまった。かつて人が用いた業ではとても到達できない錯綜する混乱の奥底に、象徴は深く深く呑み込まれていってしまった。その深さは人の欲望そのものだからどうしても届かないのだという。こうして人は再び『世界の名』を回復すべく多大な努力を支払うことになった。そしてそれは失われたまま、今に至ると伝えられる。

人呼びし名 『ドループ(Δορουπ)』世界

 現在、魔術に必要な失われた『世界の名』の代用象徴として、『ドループ』という象徴名称が人によって生み出されている。これについてはこんな話が伝わっている。どんな意味が有るのか分からないがある賢者がこう言った。『この世界は一滴の水である』と。このときの単語を聞き違えた、そそっかしい弟子が『ドループ』という名称を少数の仲間に広めた。それがついには魔法の秘儀の伝授などの時に用いられるようになったという。弟子の単なる勘違いから導かれたという発見伝説の信憑性はともかくとしても、クノーン語のドループ『失われた魂』とは皮肉な名称である。
 また、ここで年号を用いるが、プリーチャー・アンノウテート(訓戒者の注釈)暦、P.A.2503年に、つまりクノーンセンチュリー(クノーン王国歴)、C.C.1755年に二十人の賢者による一説には六十冊とされる二十冊の共著書「Δορουπ……我らが世界」で、代表をつとめた、めしいの賢者ナンメル・ザウル(俗名マウザル)が初めて用いたという説がある。この説は賢者に広く普及している。この共著書で代表者を務めたザウル賢に言わせると彼が送ったこの世界の定義を書いた手紙には「(Δορουπ)」という記載はなかったというのだが、他の十九人の賢者へ送られた手紙を書いた写字生の証言ではザウル賢が用いたという言い分である。恐らくこのいい加減な写字生が後世の名象徴を作ったのだと言っても過言ではないであろう。哲学的な名前よりも詩的な響きになったことで、世界の名としてはしっくりすると思うのであるが。
 「古代魔術」(暗黒時代の魔法、「オールド」)では作者それぞれに色々な象徴語によって世界を呼び慣わして目的に適った象徴の連なりを構成し、失われた『世界の名』の代用に苦心しているのに対し、少なくとも500年前ごろからは世界の名を偽りの名『ドループ(Δορουπ)』として完成している魔術製作者が散見される。これらは「偽シルレイル魔法」に分類される。『ドループ』は、真の『世界の名』を用いた魔術本来の世界法則の書き換えの力には及ぶべくもないが、比較的強力で安定しているため普及したという。さらに、ほぼ規格化された時代になって、多くの駆け出し魔術師の記憶力と指導する魔術師の教育力を助けてきた。しかしこの名前は人工の偽りの世界名で、書き替えによる奪い合いを力によって封じ込めることを大義名分としてうたっている結社組織の厳重な保護下に置かれているのである。つまり『ドループ(Δορουπ)』は人が見付けた名前ではなく、人が作った名前である。だから書き換えによる防御を行わなくても書き換えを防ぐ方策を立てやすいのだ。
 失われた『世界の名』を語る術を持たないから、そこで我々はこの世界を『ドループ(Δορουπ)』と呼ぶ。

湧き起こる産声

 『ドループ(Δορουπ)世界』という舞台は、決して小さくはなく想像を遥かに超える広さをもっている。やはり幾つかの大洋と大陸があり数々の島がある。ほとんどが人跡未踏の地ばかりで、人々は魑魅魍魎や妖怪どもの跋夸する暗黒におののきながら生活している。しかし魔術体系は事実上独占されているため闇を晴らす光明にはなりえていない。
 巨大魔法技術文明は、はるか昔に栄えた。それは自ら破綻を招いて輝きを失って久しく、改革や変革の名の下に権力を求め、貪欲にも更なる力を要求した社会大衆の志向は、結果、時代は愚鈍と無知に裏付けられた『鋼鉄』の暴力が支配するところとなった。まるで夢から覚めた後に己が絶望の淵にあるのを思い出すかのような、そんな粗筋で事は終わってしまった。回復不能と言われ続けて二千年紀半が過ぎ去り、相変わらず持ち合わせの貴重な希望を次々に『虚無』へ捧げる愚行を繰り返してきた。
 その愚行の重大な端例とされるのが、魔術の歴史的発達の過程で生み出された「妖術」(「下位シルレイル魔法」)である。『世界の名』が独占されたため、それに対する挑戦から生み出された妖術は世界の本質の貴重な秩序を破壊することで大きな力を得る。秩序の破壊された世界のその部分には魔術、むろん妖術でも再度の働きかけが難しくなり、回復には大きな代償を支払うことになる。破壊は次々に進み、それがゆえに魔法文明の栄光は日に日に過去の伝説として遠くなって行く。
 ただし愚行を繰り返して最後に得たもの、残り得たものがある。人それぞれに備わっている乏しいもののうち、なによりも『高貴』こそを大切に育み、正当に認めるという精神である。希望を手にいれるために希望を費やすような愚行ばかりではなく、むしろ何よりも永久に輝ける純粋な強さ、すなわち『高貴』が『ドループ』の伝説と歴史を築いてきたのだ。すなわち魂をより遥かに高いものに、または凶暴で貪欲な『いのち』の本質の謳歌のためにあらゆるものを従えてきたこの世界が、今再び、何かを産み出し産声に揺るがされている。果たして、それは何者の産声なのだろうか。

関連項目


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