セフィロスティック・クライシス

提供: マジシャナルズ wiki
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No.25



   本設定集はTRPG、小説、漫画などあらゆる表現手段に活用されるための汎用資料として開発中の試案である。舞台は月と地球と火星 及びその周辺宙域だが、現実の、我々が生きて活動している世界とは少し違っている。

 具体的な相違点としては、科学と魔法が同時に存在することを始め、月と火星に相当程度進んだ文明社会が展開されていること、反対に地球の政治・経済上の地位が低下している点などが挙げられる。それらはこれから細かく説明されていく。

 本設定資料集は現実に存在するいかなる個人・団体・集団とも何の関係もない。また、それらを比喩したり風刺したりするものでもない。

 読者諸賢の御役に立てば幸いである。


第一章 空間


 第一款 世界
 

  第一項 政治、経済、軍事


No.26

   第一目 現状


 「セフィロスティック・クライシス」を知るには、そこで住んでいる人々がどんな生活を送っているかを知るのが最も能率的かつ的確である。この世界で人が普通に生活できる空間は大別して三つある。すなわち地球、月、火星。それぞれ周辺宙域を含む。

 便宜上、なるべく地球を中心に説明を行う。

 地球は各国から選出された評議員からなる地球連邦評議会で運営されている。議題は地球の環境激変、「不穏分子(地球から移住しそびれたことを極端に不満に思っている人々)、レプリカントやアンドロイドなどの密売組織、各種秘密結社(前述の不穏分子とは区別される。具体的には魔法の力を伝承させている組織、マジシャナルズがある)など、目下山積みである。

 現在特に評議員を悩ませているのは、主として不穏分子の間で広がっている新興宗教、すなわちレラール教である。この教団は、人類の持つなにものにも負けない不屈の精神と支配されない自主独立性をうたいあげている。評議会は月に住む科学者のAI支配に追従した議決しか出さない(出せない)ため、同教団は強い反発心を持ち、地球のあちこちで破壊活動を起こしている。

 評議会での意見としては――つまり地球の意見としては――何としても自力での解決を果たさねばならない。でなければ、火星帝国レッド・テラが「地球の諸問題の解決に積極的な協力を申し出る」という古典的な外交辞令とともに軍隊派遣ひいては植民地支配を実行に移すこと必定である。それを力づくで跳ね返すには、地球の力はあまりにも疲弊しきっていた。

 一部の評議員からは、万一に備えた民兵組織の設置と、戦時特別課税が提案されていた。しかし、議決には至らず、いたずらに時間が流れる内決定的な事件が発生する。月への移動を可能にしていた軌道エレベーター基地と宇宙港を、レラ―ル教徒たちが爆破したのである。これは、テロをおこした側にも、予想だにしない強烈な事態を起こした。当初、ちょっとした破損を招くだけに留めるはずだった軌道エレベーターは完全に崩落、破片は地球に落下して大惨事を引き起こす。地球は混乱し、あらゆる通信・流通システムは麻痺寸前にまで追いこまれた。

 レッド・テラはこの願ってもないチャンスをものにするべく軍隊を派遣した。連邦評議会の存在はまったく無視された。事前に交渉団は送ったが、「丁重に特別室へ移され」帰ってこない。

 レッド・テラの動きは電撃的であり、まず月と地球の連絡を一切遮断し、大戦力を月領有宙域のぎりぎり外に展開して同星を牽制、この隙に地球周辺宙域を制圧、そして快速上陸部隊による地上占領ならびに評議会の解散という段取りとなっていた。

 しかし、レッド・テラの計画には一つだけ不安定要素があった。それはマジシャナルズの存在である。レッド・テラ首脳部では、マジシャナルズへの弾圧を主とすべきか、レラ―ル教を先にするか、それともまず連邦評議会の解散要求から着手するのかで方針が明確さを欠いてしまい、軍隊の侵攻速度は鈍化した。レッド・テラ首脳部としては、たかが一介の民間新興宗教の力だけで、警戒厳重な軌道エレベーターの崩落が可能なはずはない、魔法の攻撃ではなかったという考えをどうしても捨てられなかった。

 結局、折衷案が採用され、まず火星本国での魔女刈りが行われた。首脳部にマジシャナルズのスパイが潜入しているという情報が入ったためである。この結果、火星本国でのマジシャナルズならびにその疑いのある者はほとんど一網打尽になったが、地球侵攻はその間延期されてしまい、地球にとってはまたとない絶好の時間稼ぎとなった。また、マジシャナルズは最初は反論も肯定もせず沈黙を守っていたが、火星での惨状を知ると同時に積極的な攻撃体制を取り始めた。

 地球周辺宙域の制圧を巡り、地球対火星の壮絶な艦隊決戦が行われた。レラール教はこの動きに直接関与せず、高見の見物を決め込んだが、マジシャナルズは(決して表だってではなかったが)地球を間接的に援護したため、火星艦隊はついに決定的な勝利を逃した。両軍はともに大損害を受け、本国の経済もそれぞれ疲弊した。レッド・テラでは特権階級への不満が増大し、地球では連邦評議会の存在が形骸化した。

   (続く)


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