テクノクラテスの民衆支配

提供: マジシャナルズ wiki
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No.38


 いかに精密精巧なコンピュータシステムを導入しようと、支配される側、つまり民衆がその気になって従わねば何の意味も持たない。当初は能率的な開拓事業の推進のために設けられた超AIは、ルナ・シティの開発が軌道にのってからも月開拓民の支配機構たり得た。そのデータバンクは一部の上級幹部以外には一切非公開であり、超AIの下した結論は絶対の方針として実行に移される。民衆は何故こうした超独裁権力を受け入れているのか? なぜ情報サービスの提供を細分化させ、自らも民主的に管理運営を行わないのか?

 その答は「水」である。超AIは月の岩石から水分を抽出する技術を独占しているのだ。民衆がうるさく自分たちの権利を主張しようものなら、即座に水の供給はカットされ、超AIの何たるかを身をもって叩き込まれる。むろん、この技術もまた最重要機密事項である。それまでは地球から脱塩処理した海水や浄化済みのし尿をいちいち輸送ロケットで運んでいたのだ。水を電気分解すれば水素と酸素が得られるので、水を握るということは大気とエネルギー源を握ることをも意味した。

 具体的に月のどの場所で月の大地から水を抽出しているのかも極秘にされている。なおこの件は地球も火星も漠然としか知らない。


イージーエイト