アリアハン地方

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カラナース亜大陸とアリアハン王国

 アリアハン王国が領有する地方一帯を呼ぶ。「エイドリア大陸」から伸びるレムディーク半島の北から南に折れ曲がった南端地方の、広大なカラナース亜大陸一帯と多くの大小の島でなる。中心となるのは半島としてはレムディーク半島だが、亜大陸として呼ぶ場合はカラナースという古代王国の名が出てくる。アリアハンと呼ぶ場合はアリアハン王国全体と同じ意味である。たまに交易先の遠方の中継基地も含む。デューラ海に囲まれ北はレムディーク内海である。

西へ行く航海民族

 民族はカーゴ人が占め言語はカラナース古代語が変化した、外来語の豊富なアリアハン語が使われている。カーゴ人は航海にたけているが東方の海は技術上限界があって渡れず、交易民族としては容易な北方と西方に海外を越えた奥地へ道を求めている。その技術、ルート、本拠地の島と故郷の亜大陸については秘密を保っている。

海の道

 アリアハンでは船は大きな財産で、造船は貴重なバーラン杉材がとれるエスタニア島で盛んである。そのためエスタニア島は中継貿易が盛んで、男達【たち】のほとんどが一生を船上で送った。船は大抵中央に大マストその前に小マストの2本を持つ。また両舷に20名ずつ漕ぎ手がおり、片側十本のかい一本に2名付いた。漕ぎ手は奴隷である。また前方には大きな衝角が伸び、そこにいろいろな謎めいた彫刻が施された。彫刻は異国の文化に題材を求めた。しかしこの種の船には荷は積まず、箱船状の帆のないものを、3隻から4隻で引いた。箱船にはこはく、ルリ、木材、銀鉱、鉛、亜鉛、漁獲物、毛皮、貝紫、加工石などが持ち込まれ、金銀細工、木製家具、硝子製品、織物、宝石などが積み込まれた。船では家畜を生きたまま連れていくのは珍しくなかった。船上には豚およびヤギが放たれ清掃していた。水夫たちの食べ滓を拾うのに役立ったのである。水夫たちは肉と酒の消費が信じられないほど多かった。新鮮な肉とうまい酒がなによりの代価であった。

上陸先から伸びる交易路

 陸上ではロバ、希に馬によって隊商が町々を行き交った。遠くの異国の砂漠まで達すると交易基地を作ってあって、海で30~50隻もの船団を組んだようにさらに長距離を行くものは、2万ものラクダを引く。足の速い隊商は日に40から50キロ進んだ。長い道程には危険も多く、専門の護衛団も雇う。おもな取り引き品は、なつめやし油、塩、宝石、遠方の地の工芸品、香辛料、毛皮などで、中には茶、香料、真珠、装身具用の貝殻、陶器の塗り薬、珍しい織物、高価な薬品、薬草、魔法に用いる物品も含まれていた。これらを効率良く運ぶために荷車を用いた。車輪の小さい四輪の台車でロバや馬で引かれる。天蓋を設けたものもあり一役買った。街道はほとんどが舗装していない農道のようなもので、一度雨が降ると四輪荷車の通行を妨げた。四輪車はぬかるみを避けて道の横に出て走ったため、その位置が少しずつ変わってきている。

水と油

 水夫も隊商も水は大切なものであった。井戸は土地所有と一致しないことが多くよそ者では使わせてもらえなかった。砂漠の井戸は毒性の水が多く、危険である。井戸の少ない都市では水道か水を売る商人に頼っていた。船では飲料用、調理用と10日分を蓄えた。水夫たちが頑張れば15日は持った。それ以上は水が古くなり、どうしようもなかった。隊商の用いたものに水入れ用の革袋がある。革、それも古革から滲み出てきた水が蒸発するため中の水温が低くなるのを利用したもので、量は減るが冷たい水が得られるという便利なものである。また、なつめやし油を扱うときは素焼きの特殊な容器を用いた。5センチくらいの短い、太いパイプに取っ手と脚の付いたもので、中に膜が張るようになっている。このまま取り引きできるので隊商にしても失うものがなかった。

アリアハンの都市

 故郷のほうでは古代は密集を好んだが誇り高いアリアハンの人々は過密するのを望まない。アリアハン最大とされるメガロポリス・メッサーラも人口増加政策にもかかわらず史上100万人を超えない。むしろ減少に転じているくらいである。原因は都市構造技術の貧弱さと戦乱、疫病、そして食糧の不足とその供給の変動によって起きるという。アリアハンでは平和が続いているので都市は大抵交通の要所に配置されている。都市を中心に主要街道、用水路、農道を整備し、食料を得るために周辺に広大な土地を必要とした。
 都市は必需品、とりわけ食料を調達できる範囲においてのみ形作られ成長できた。どんな都市でもマクウェイの中にすら菜園があり、果樹園があった。それらをたくわえる貯蔵庫もあった。都市の市民はほとんどが土地を、つまり耕作地を持たず、所有者ではない。手工業者、商人、法曹、行政官、役人そのほかのサービス業者であれば経済的、多くは政治的にも近隣の村を併呑しておく必要があった。半径6ないし8キロメートルでは人力、それより離れたら馬を使ったりあるいは二輪荷車で市場または仲買人に食料、必需品を供給することができた。他方都市はそこに通じる道路を整備し、その安全を確保するのにかなりの費用と人間を使った。河川はその供給地の拡大におおいに役立ったのは言うまでもないことである。アリアハンでは交通は人、ロバ、馬、牛の速さによって決まっていた。情報と宗教の波及も、戦争さえもそれらと船によっていたのである。

城砦マクウェイ

 城塞発展型の都市の典型はマクウェイであった。城塞は都市の成長のたびに壊されることなく、多重構造の封建型都市ができたのであった。年輪のような城壁は防衛に際して役立った。迷路のように入り組み、幾重にも曲がっている街道も生んでいる。反対にメガロポリス・メッサーラはまったく違い、大きな正方形の地形を無視した区画が全体の形に関係なくできあがった。ちなみにマクウェイの人口は30万人そして奴隷が20万人以上といわれる。
 

王国の平安

 賢者博士の裏付け通り邪界放逐現象のため、アリアハンは怪物のうろつく世界である。よって治安は悪化するのは当然で、突然の侵入に備えて戦士養成の私塾、私立家庭教師の育てる専門戦士、(主に)魔法学校出身の魔術師などの者が、はぐくまれていったのである。彼らなきところは魑魅魍魎の徘徊し人の命を千人奪う勢いが支配するところ。治安は古来からの習慣的な法制度の不備から来ているものもあって、王国の行事である「凱帝行列」でのクライマックスの一昼夜は法律無効日である。力を持たない老人や奇形児、障害者、恨みを買った者などを葬り、また貧者の財産を奪う。この日は私的治安によって都市は守られる。こうして私的治安力のない者が殺されている。この習慣も持ちながら、別にアリアハンにある都市のほとんどはマクウェーのカーニバル「セレッツォ」の類いを行う。この類の日には近年は健康保持とする傾向があるが肉食を断ち、期間中の禁欲と質素倹約をして浪費を戒め自省する。こうした面もある。

建築

 都市は不衛生で、街路ぞいに面する家の部分は小さく(「窓は一つで後妻がいる」という言葉は資産家を表している)後方に広かった。そこに中庭を持つ上流の家やアパートもあった。王国政府の税金制度のためである。建築様式として普通に見られるアパートは風呂こそ無かったが中庭から街路に向かって玄関、広間、寝室が三つというもので二階だけせり出していて広い。食料を仕入れ、そこで調理する共同の台所設備を持っている。家々はそれぞれ、家の前の清掃を受け持っているが、習慣として肥え壺の溜めた汚物を通りに捨てている。これが伝染病を蔓延せしめている。アリアハンの上流邸宅には大庭園と柱廊が必ずあり、部屋数は40以上、メノウ石か雪花石膏の丹柱が天井を支え、天井と床の面はモザイクで飾り、壁には宝石が象眼され、テーブルは高杉で誂え、足は象牙造り、など、遠方からもたらされた珍しい布地や壺などが展示される。

都市政治

 アリアハンのほとんどの都市は独立した自治をしているが、都市周辺農村との交易は自治支配がない。あるとしたら都市においての生活上での保護規定でだけある。王国政府は自治支配をそこまでしか認めない。都市では定期的に市が立ち、それは隊商がくる日でもあって、そのためどんな日でもどこかの都市には市が立っていたのである。自治都市の市は出店を許可制にすることが多かったが交通の乱れを防ぐためにしか不許可はない。城砦はマクウェイ城塞都市ほどではないが必ず一部に建設された。兵力の増強は必需品を増大させ、消費も増えた。そこに商人や職人が集まり、マクウェイ城砦都市の場合は城壁を何度も破って広がっていったのである。ヨマンは村落が発展したもので、それは領主の館とするための城砦を中心に農家から職人になったものが集まり、商人が入り込んだのである。計画的に、人為の成果として建造されたメッサーラなどは例外である。

農産物

 昼の雑踏にはいろいろなものが取り引きされた。アリアハンに固有の砂麦は麦芽汁と種子とに分けて壺にいれて扱われた。主に小麦、大麦、ライ麦、マイロ(こうりゃん)、燕麦(飼料用)などには特別な穀物商がいて、かれらは脱穀済みの種子を挽臼で引いてから売った。穀物として米は栽培されていないがとうもろこし、大豆は盛んに栽培されている。繊維用としてジュートやサイザル麻、綿花や絹糸も貿易で取り引きされた。
 油脂用にオリーブ、なつめやし、大豆がつかわれる。オリーブ、大豆の加工は専門業者が行う。畑は主作の栽培後、芋類や豆類を植える。これらのほか杏、林檎、梨、葡萄、栗、桃、イチジク、苺、蜜柑などの柑橘類など果物、トマト、キャベツ、白菜、キュウリ、ナス、カボチャなどの野菜が取り引きされる。なつめやしは主に隊商が特殊な容器にいれて南方世界から持ち運ばれてくる。酒造用として葡萄やこけモモ、ウメ、もちろん大麦や小麦、とうもろこし、そして砂麦の麦芽汁が利用された。葡萄酒造りは各家庭で頻繁に行われ、幾種もの味があった。料理にも用いられた。しかし都市の家庭では農村とは異なり、税金や空間的な条件のせいで作ることができないので酒を買い入れる。アリアハンでは酒の貯蔵の旨さが主婦の腕の善し悪しを決める一要素である。
 魚は敬遠されたが、鯨は好まれる。魚は生のまま、塩漬け、燻製、干物にして売られた。しかし全体として食生活で摂る蛋白源は豆中心で空豆、えんどう豆は重宝がられ、インゲン豆も用いられた。カブ、ネギ、タマネギ、レタス、クレソンもあった。さくらんぼ、フランボワーズ、すぐりの実、アーモンド、はしばみ、くるみ、プラム、マルメロ、ボンバ、メロンもあった。それからなつめやし、干しイチジク、レモン、オレンジも豊かな家にはあった。ウサギの飼育、いろいろな香辛料とパンをつけた液体を使ったソースの製造およびハチミツのジャム、ぶどう以外の果実酒、マヨネーズ、乳製品を作るのがごく最近広まっている。

畜産物

 町の雑踏にはロバ・らば・牛・豚などが歩き回っている。夜に豚が放たれ、昼の残飯と汚物が片付けられた。羊毛はフェルトにされる。主に酢でフェルトを固める。畜産の対象としては羊、山羊、ロバ、らば、牛、豚の他に、鳩、鶏、鴨、白鳥から孔雀がある。土地が肥えていて脂肉が安く手に入りやすかったので多くの民衆はそれを好んで生のまま噛んだ。しかし胃に流し込むために香辛料を必要とした。牛はもっともポピュラーな家畜で皮からひづめまですべてが利用された。すべての農家が肉置き場を持ち、冬の初めに屠殺を行った。また、北方の野菜の育たない土地ではトナカイが飼われ、その血液も調理された。香辛料は薬草、からし、にんにく、しょうがが発酵させたりして用いられた。